内頚動脈狭窄症に対する血行再建術には、手術(内膜剥離術)のほかに血管内治療(ステント留置術)があります。2007年からステント治療にも健康保険が適用されるようになり、治療件数は急速に増えてきています。鼠径部よりカテーテルを頚動脈に誘導し、バルーン、ステントを用いて狭窄部を拡張させます。血管拡張中に狭窄部から脳血管へ血栓や動脈硬化病変(アテローマプラーク)の破片が飛ばないように、フィルターやバルーンを用いて内頚動脈遠位部を保護します。この治療は局所麻酔ででき、身体の負担が軽い、治療時間が短い(1時間程度)、首に傷が残らないなどのメリットがあります。ただし治療に関わるリスクは手術も血管内治療もほぼ同等です。内膜剥離術は病変を「摘出する」治療ですが、ステント留置術は「外に押し広げて内腔を確保する」治療です。油の塊のような柔らかいアテローマプラーク(不安定プラーク)に対しては、ステント治療は不向きです。(ステント留置を行ってもステントのメッシュの間からプラークが飛び出してくる可能性があります。)そのため、術前に必ずプラークMRIや頚動脈エコーを行って、プラークの性状を評価しています。患者さんごとに手術、血管内治療のどちらが適しているかを十分に検討して、治療法を選択しています。当院におけるステント留置術の周術期虚血性合併症リスクは2%以下であり、極めて良好な成績を維持しています。