2014年2月からベルリンに留学している堀 聡先生からの留学レポート第2報が7月に続いて届いたので掲載させていただきます。
ベルリンより留学報告記第2弾を送らせていただきます。時が経つのは早いもので、ベルリンで冬を迎えようとしています。厳しい寒さに不安はありますが、街中ではいたるところでクリスマスマーケットの準備が進められ、これから楽しみな時期でもあります。 最近では、アシスタントとして手術に参加させていただく機会も増え、間近でChariteの手術手技を勉強しています。(脳神経外科に限りますが)日本の医療レベルと比べて根本的な違いや差があるかというと、ほとんどありません。しかしながら、どのような方法で特色を出しているのかという点で違いはあります。Chariteのような膨大な手術件数をこなすには方法論が必要です。シンプルな手法で、かつそれを実行できる術者が行なうという事です。Chariteでは教授を中心に経験あるスタッフのみが手術に入り、完全に役割分担がなされています。体位やアプローチも可能な限りシンプル、低侵襲な方法を選択しています。時にそれは熟練した術者でないと行なうことができない手術となりますが、患者さんにとってはメリットでもあり、色々と模索した結果現在のスタイルがベストと考えている様です。「このアプローチでもここまで見えるのか」などと驚く事もしばしばで、一般的な(と私が思っていた)手技のみにとらわれず、それをModifyし常に新しい方法を考えている姿勢は学ぶべき点だと思いました。その一方で、細かな止血操作や静脈温存に日本人ほどのこだわりを感じる事はなく、また例えばバイパス手術は基本的にシングルバイパスを行なうなど、明らかに結果に影響しないと思われる範疇であれば割り切って時間をかけません。そして手術は上手いですが、少々大胆です。1例1例に時間をかけて、少しでもマイナスとなりうる可能性があるならばそれを避けるという考え、そしてそこから多くの学びや発見を得ようとする姿勢、手術手技の繊細さに関しては日本人の方がこだわりがあると思います。しかしながら、これはどちらが優れているという事ではなく、どこに重きを置いて、どの特色で勝負して行くかが大切であるという事だと思います。その違いを実際に体験できている事は、私にとって大きな財産であり、今後は両方面からの考えが抵抗なく出来るのではないかと思っています。
またドイツと日本で決定的に違う事は、患者さんでしょうか。それは性格や体格という事ではなく「出血の少なさ」です。こちらに来た当初から思っていた事なのですが、皮下や硬膜外スペースからの出血が日本人と比べて明らかに少ない印象で、それほど止血に時間をかけているわけでもないのに(基本的に硬膜の吊り上げ縫合(止血目的)も行いません!)、開頭後の術野が赤くないのです。最近では手術のアシスタントに入ると閉創を任されたりすることも多く、またこの前は開頭をやらせて頂く機会もあったのですが、日本人と比べると出血コントロールが容易なのを実際に感じています。人種の違いなのかどうか分かりませんが、面白い事実だと思います。 諸外国の留学生から、「なぜ留学に来たの?日本の医療レベルは高いし、学ぶ事はないでしょ?」とよく言われますが、どんでもない。このような違いを実際に体験する事が留学の意義の一つであると私は思います。次回(おそらくすぐに)はこちらで参加した学会の内容や、現状の課題などを中心に報告できればと思います。
Dr. Satoshi Hori is studying at Department of Neurosurgery, Charité, Berlin under the direction of Prof. Peter Vajkoczy since this April. This is the second report from him.Photo with Prof. Peter Vajkoczy and Dr. Satoshi Hori at operating theater.
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