10月24日掲載の脳神経外科疾患メモvol. 7において、開頭脳動脈瘤クリッピング術の術中写真を掲載しましたが、今回はもう1つの治療法、脳血管内治療(コイル塞栓術)に関して記載します。
クリッピング術は動脈瘤を「外から」つぶす治療ですが、コイル塞栓術は「中から」詰めものをして破れなくする治療です。患者さんには「風船玉をゴルフボールのように固めてしまう治療」と説明しています。
足の付け根の動脈を穿刺して頭部に向けカテーテルを誘導し、細くて柔らかいマイクロカテーテルを脳動脈瘤の中まで慎重に進めます。そして動脈瘤内に、非常に柔らかいプラチナコイルを詰めていきます。正常血管が温存され、かつ動脈瘤内に十分なコイルが留置され、動脈瘤の造影が消失したところで終了です。いずれ動脈瘤の中は血栓化して固まるので、破裂を防ぐことができます。
治療に際しては、瘤内をしっかりと塞栓するだけでなく、正常血管を温存して脳血流を保つことが重要です。そのために、塞栓時にバルーン(風船)カテーテルで正常血管を保護しつつ塞栓することもあります。2010年7月からは、これまで血管内治療に不向きであった頚部の広い動脈瘤に対して、ステント(金属製メッシュ状の筒)を併用することで、正常血管を温存しつつ、動脈瘤内に十分なコイル塞栓を行うことができるようになりました。
画像は、実際の治療前後の血管撮影所見とシェーマです。未破裂脳動脈瘤の多くは血管撮影室で局所麻酔にて行いますが、破裂動脈瘤や複雑な治療を要するものに関しては、手術室で全身麻酔下に行います。当院の手術室には、最新の血管撮影装置(Artis Zeego: SIEMENS社)が設置されています。