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脳神経外科疾患メモ Vol. 3 硬膜動静脈瘻 (dural arteriovenous fistura: dAVF)

脳を包む硬膜において、動脈が毛細血管を介さずに直接静脈に流れ込むことにより、様々な臨床症状を呈する疾患です。圧の高い動脈血が、圧の低い静脈に直接流れ込むため、静脈内の圧が高くなり、脳の静脈が逆流することがあります。少し難しい病気ですが、下水道に上水道が直接つながってしまい、排水孔から水が溢れだしたような状態だと思ってください。症状としては頭痛や耳鳴があり、ひどい場合は脳出血を引き起こすこともあります。病変が目の奥の海綿静脈洞に存在する時は、複視(ものが2重に見える)・眼球突出・目の充血といった症状が出る事もあります。
はっきりとした原因はわかっていませんが、先天性のものではなく、外傷やホルモンバランスの異常、静脈洞血栓症、血液凝固能異常、静脈性高血圧などが考えられています。
治療は血管内治療が主流です。罹患静脈洞そのものにカテーテルを通し、動静脈瘻が存在する部分をプラチナコイルで閉塞させます。多くの場合は切ることもなく血管内手術だけでほとんど完全に治すことができます。
全国調査において、発生率は人口10万人当たりに年間0.29人という、まれな疾患ですが、当院では毎年5~10例、現在までに200例ほどの治療実績があります。

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